ある少年の少年院出院

先日、NPO法人なんとかなるで、ある少年の少年院出院に立ち会いました。
私にとっては初めてとなる経験でしたので、詳細にご報告です。
(詳細に、と言っても個人情報が特定されないようにしたいので、そこはご理解ください)

ご家族が、わけあって立ち会えないということで、NPO法人なんとかなるから、私と田神事務局長と宮入さんがお迎えに行きました。宮入さんは、少年院だけでなく刑務所も含めて、何度も対応されているのですが、私と田神さんは初めて。午前中の出院ということが法律で定めれられていることや、出院したらすぐに保護観察所に行かなければいけないことなど、ほとんど知りませんでした。

第一印象は、「なぜ少年院に?」でした。なぜなら、いたって「普通」だったからです。見た目も、こざっぱりした服装に荷物は軽めで(ダンボールに詰めてNPO法人なんとかなる宛に送付済みとのこと)、まるで家からちょっとした旅行にでも出るかのような格好でした。
少年院で、出院(正式には仮退院というそうです)の許可をもらって、田神さんの車で保護観察所に向かいました。車の中でも雑談が途切れることはなく、少年院を出た感想について「ちょっとふわふわしてる感じ」、「まだ現実感が湧きません」と素直に話してくれました。

保護観察所では部屋が狭いということもあって、保護観察官との面談には宮入さんに立ち会ってもらいました。少年院を出てこれからどうするのか、といった保護観察官からの質問に一つ一つ丁寧に答えていったそうです(宮入さん談)。本人的には「とっても事務的でした」とのこと。

共同代表の岡本から、出てきたお祝いだからお昼は食べたいものを聞いてあげて、と言われていたので、保護観察所に向かう車の中で「何が食べたい?」と聞くと、「何でもいいです」という答え。「なんでも美味しいと感じると思います」。宮入さん曰く「少年院の中では生物(なまもの)が出ないのよね」と。「そうなの?」と確認すると、野菜も必ず湯通しされているし、お刺身なども一切口にすることはなかったとのことで、本人も改めて気づいたらしく、驚いていました。そこで「それじゃあ、お寿司なんかどうだい?」と田神さんが水を向けると、「いいんですか!?」と嬉しそうに答えたので、近くのお寿司屋さんを予約しました。「回らないお寿司屋さんを予約したよ」というと、本当に嬉しそうにしてくれました。

保護観察所を出てお寿司屋さんに入り、席に着いてみんなで同じメニューを注文しました。私にとっては量が多かったので「好きなお寿司を3貫とっていいよ」と伝えると、一度は遠慮しましたが「いいから、いいから」と、半ば強引に取らせました。量の少なくなった私よりも早く、ぺろりと平らげてくれて、見ているこちらも気持ちよくなりました。

そのあと、NPO法人なんとかなるで管理している「馬堀寮」に田神さんの車で戻りました。帰りの車の中では、たくさんの雑談をしましたが、テキパキと質問に答えてくれるので、頭がいいんだね、と言うと、「少年院の中で『頭の回転が早い』と法務教官から褒められたことがありました」、と嬉しそうに話してくれました。

「馬堀寮」に戻ってからは、これから始まる生活のこと、仕事のこと、どんな入居者がほかにいるか、などを確認しました。程なく、保護司の方もお見えになってくださって、面談をしました。

それで、働き始めるのは次の次の日から、ということで、次の日も(私は同席しませんでしたが)宮入さんが健康診断、市役所への転入届、作業服や安全靴の買い物、などなどに同伴して、夕方には馬堀寮に戻ったということです。そして次の日には、始発に乗って現場に出勤していったという報告がありました。

以上、書いてみると雑駁になってしまいましたが、ご報告です。
少年院に入っている期間は一般的には11ヶ月ですが、長いと感じるか短いと感じるかは、少年それぞれのようです。中の様子は何度も見学させていただいているのである程度把握していますが、その心境までは推し量ることはできません。出てくるときの気持ちについても、同様です。ただ今回、出た直後の前向きな気持ちを、私は感じることができました。この新鮮な気持ちをお互い忘れずに、NPO法人なんとかなるとしては、できるだけ寄り添い、けれども不要には立ち入らず、適度な距離を模索しつつ、立ち直りの支援を続けていきたいと思います。

(共同代表 吉田雄人)